· 

マフラー 第1話

「寒くてイヤんなっちまうよ~」と、

友達が電話の向こうで嘆いた…。

彼は古い友人だ。

「もう冬だな。また冬が来たって感じするよな」なんて言いながら、

頭の中は、高校時代の冬を想い出していた…。

あれは高2の冬だった。

確か12月。

12月なのに、横殴りな風と雪が吹き付け、学校から駅までの、もう暗くなった帰り道を、憂鬱この上ない道に変えていた。

私は身体を丸めながら、寒さに耐え、震えながらようやく駅にたどり着いた。

駅の待合室は混雑していたが、やはり暖かく、電車が来る知らせのアナウンスまで友達と雑談に花を咲かせていると…

先の電話の友達が、ニコニコしながら入って来た。

誰もが寒さに震え、ようやく待合室にたどり着いた感じだというのに、

彼はまるっきり寒さを感じていないような、いやいや、むしろ暖かな気分といったような顔をしているではないか!

私は聞いた。

「おまえ、寒くないの?」

続く…。